算数科 津川郷兵

 

数学的なコミュニケーションを通して新たな価値を創造する算数科学習

 

本校2年目になりました。今年度は,5年3組の担任をしています。

 

昨年度は、子どもたち自らが数学の世界を切り拓いていけるような単元構成の在り方について研究していきました。2年生のかけ算では、かけ算九九の世界において徐々に数を発展させ、かけ算の性質や法則を見つけながら学び進めていく姿が見られました。

しかし、子どもたちが様々な数学的な見方・考え方を働かせながら、それぞれで発展させ、学習の個性化を図ってきた中で、それぞれが働かせている見方・考え方の接点が少なくなってしまい、子どもたちどうしの対話が生じにくい状況が生まれてしまうこともありました。

 

対話が生じにくくなってしまうことで、以下の4点がデメリットとして出てくるのではないかと考えました。

① 新たな数学的な見方・考え方が派生しにくいこと

② 自分の考えを整理するタイミングがとりにくいこと

③ 他者との考えを比較する時間が生まれにくいこと

④ 自己調整するための判断基準が少なくなること

 

学習の個性化を図りながら、子どもたちがよりよく学ぶためには対話による共同的な学びが欠かせないことを改めて実感いたしました。

 

そこで、今年度は、数学的コミュニケーションを通して新たな価値を創造することを研究していきたいと考えています。

数学的コミュニケーションとは、それぞれが数学的な考えをもち寄って、試行錯誤することを指しています。その中で価値を見いだし、その価値をそれぞれが学習の個性化に生かしていくことをねらっています。

 

そのためにも、次の3点を中心に授業づくりを行っていきたいと考えています。

・数に意味をもたせるための学びの文脈づくり

授業の中、単元の中、または年間計画の中で、子どもたちが事象や他者、自己に働きかけていく中で自然と数学を見いだしていくことができる学びの文脈をつくりだします。また、問題解決の中で得られた結果から意味を見いだしたり、発展させたりする中で、その文脈のつながりを生み出していきます。

 

・第2の課題の焦点化

数学的コミュニケーションが生じる場として、子どもたち一人一人が事象に対して対等な関係となったときに、それぞれの発想が折り重なっていきます。そのためにも、第1の課題を解決したその先にある、第2の課題が重要なのではないかと考えています。「80cmのテープ3つ分で240cmのテープができるから、他の長さのテープでも同じようにできるかも」など、一度全員が第1の課題の活動の中で経験してきたことの中から生じる新たなる課題を解決するときこそが、課題を焦点化させる瞬間であると考えています。また、ここで生じる課題は子どもたちにとって試行錯誤できる余地が十分に残されているものでなければなりません。単元の中やその時間での授業の働きかける対象や枠組みを検討していきます。

 

・数学のよさを実感できるための手立て

子どもたち全員が、数学的コミュニケーションに参画しなければ、成立し得ないと考えています。そのためにも活動はシンプルで、数学の世界へと入り込みやすいものでなければなりません。だからこそ、他領域で操作や活動を行っていく中で、手で数学を感じながら、そのよさを実感してほしいと願っています。その実感の仕方は人それぞれわかりやすいものとわかりにくいものがあります。その部分をメタ認知しながら、子どもたちが自ら選択し、働きかけ続けられる学習環境をデザインしていきます。

 

今年度は様々なところで、この視点に沿って研究してきた成果や課題をたくさんの先生方と議論していきたいと思っています。今年度もよろしくお願いいたします。